途中に挿絵が挿入Wされております。
街まで帰ってきたレーシュ達に待ち受けていたものとは?
それでわ!参りましょう・・・
Pass9善か悪か<<力>>
一体何が起きたというのでしょう。
街の人に囲まれているのはアレフさんだけではなかったのです。
ワタクシの周りにも殿方が数人現れたのです。
「ちょっと?!一体何の真似なのですかッ?」
ワタクシが訊きたいのは、周りを囲んだ事ではありません。
「その人に何をなされたのですか?!」
帽子を被ったまま倒された方へ、何をしたのかって話です。
「誘拐されていた女性を救出されたのは、そのお方なのですよ?!」
何も知らずに倒したというのなら許されるって訳でもないのですが、知らせておくのは必要だと感じたのです。
「あなた方は恩義はあっても、恨みは無い筈でしょう?」
それなのに何故こんな真似をしたのかって、質したかったからでもありました。
ワタクシが倒されたアレフさんに駆け寄ろうとしたら、立ち塞がる殿方達が。
「恨みはねぇが、邪魔をしてくれたんでな」
暴挙の理由を話すのです。
「邪魔?邪魔とは何の事ですか?!」
地下迷宮の魔物達をも倒してくれた恩人に、邪魔とは何事でしょう!
「魔物とは互いに共存できる関係になっていたんだぜ」
「冒険者達を迷宮迄誘い込めれば、街には被害を与えないと言って来ていたんだぞ」
ワタクシを前にした人が、とんでもないことを言い始めたのです。
「こいつがやったのは偽善に過ぎないんだ。
魔物は何度倒したって直ぐに復活しやがるんだぜ?
いくら迷宮を潰しても、また新しい住処を造っては襲って来るんだぞ!」
「それが嫌だったから冒険者を引き寄せ、魔物への貢ぎ物にしていたんだ」
「それを台無しにしやがって!」
口々に罵る声を上げる人達に、ワタクシは開いた口が塞がらなくなります。
この街の方達は、初めっから冒険者さん達を魔物への贈り物としか観ていない?
冒険者を道具以下にしか観ていなかった?
そもそも、魔物を退治しようなんて思ってもいないと?
それじゃぁ誘拐されていた女性は?
初めっから救出しようなんて思いっても居なかったの?
「連れ帰って来た方達は?
女性はどうされたのです?」
この方達に冒険者への理不尽を説いても無駄でしょう。
それよりも折角連れ帰って来れた女性の安否が気になったのです。
「一度魔物に抱かれた女には、人の子供は産めやしないだろう」
その一言で悟らされました。
「あなた方は生き残れた女性に、何を?」
震える声で質してしまったのです。
人が悪魔と化す瞬間を、自ら求めた様なものだったのに。
「また魔物に襲われた時に備えておくだけさ。
どうせもう、人には愛されない体に堕ちているんだからさ」
それは、彼女達に死を宣告するに等しい。
再び魔物が襲って来たのなら、まず最初の贄とされる・・・と。
「ケダモノ・・・」
この街に居る方達は、人の仮面を被った
「獣?ああ、そうさ。
魔物は何度でも襲って来るケダモノさ」
ワタクシに嘯く声が投げられます。
「違いますッ!ケダモノはあなた達の方です!」
頭が痛くなる程の負の感情が、湧きかえって来るのを感じたのです。
ズキンズキン・・・と。
秘密にしているワタクシの角が、何かを求めて痛むのです。
「
痛みのあまり立ち眩みが襲って、しゃがみ込んでしまいます。
それでも取り囲んだ方を睨み、人為らざる行為を憎んだのです。
「アレフさんは愚かですが非情ではありませんでした。
非情なように見えても、誰かを救うのを躊躇したりはしなかった。
そのアレフさんを酷い目に遭わせて、痛痒もないなんて。
あなた達はワタクシ達を如何になされるおつもりなのです?」
ワタクシもアレフさんも、そして折角連れ帰った女性達も。
この方達にとっては、魔物の贄にしか過ぎないというのでしょうか。
「どうもこうもあるかよ。
殺して魔物に差し出したら良いんだよ」
「迷宮を滅ぼした張本人だって言えば、交渉に応じてくれるだろうし」
この方達は、本当に腐り切っています。
魔物との交渉なんて、いつ破られるか分からないというのに。
「自分さえ良ければ。
他の人達の事なんて想いも、考えたりもしないのですね」
自分だけが生きていられれば・・・生にしがみ付くのは罪ではありません。
他人がどうなろうと・・・人として生きていられるのなら。
悪魔に魂まで貶められた・・・人ではなくなっている。
この街には、善良な人は居なくなってしまわれたのですか?
だとしたら・・・聖龍神のシスターが執る道は一つだけ。
「獣と化した悪魔達よ。
悪魔は神に駆逐されるべき存在と知りなさい・・・」
ワタクシは、スクエア神父様から頂いた聖なる杖を放り出しました。
「神がお越しにならない穢れた場所に、悪魔が居るのなら・・・」
髪を結っていた黄色いリボンを摘まみ、勢いよく引きました。
「その地に穢れを祓う力を齎さん!」
リボンを解き、赤味を帯びる
観られてはいけない秘密。
見せてはならないと言われている角を。
人に災いを呼ぶとされた、ワタクシの内なるモノを。
「気が遠くなる・・・」
先程から続いていた痛みが、急激に沸点を越えてしまったようでした。
それが始り。
そして・・・彼等の終わり。
「私に力を貸せ・・・」
紅い瞳で彼を見詰め、彼を欲する声が・・・
ワタクシの代わりに、身体に潜む者が現われたのです。
「私の力となれ・・・魔王よ」
ー 魔王?誰の事なのでしょう?
そこまででした。
私の意識が残っていたのは。
もう一人の自分が現れ、何かを求めていたのは覚えていますが。
レーシュがリボンを解き、白角を現わした時。
こん棒で殴られて気を失っていたアレフに変化が。
ビクンッ!
レーシュの角に気絶させられたアインと同じ。
身体を痙攣させたかと思えば、目を開け放つ。
「誰だ、俺を呼んだのは?」
角を現わしたレーシュに街人達が注目していて、目覚めたアレフには誰も気付いていなかった。
周りに人影がない事に気が付いたアレフがゆっくりと起き上がると。
「おいおい見ろよこのシスターを」
「エルフだぜ?」
「いいや、違うぞ。エルフには角なんて生えてはいないぞ!」
レーシュを取り囲む男達の姿が観える・・・
「あいつ・・・あいつが?!」
レーシュを見詰めて唸るアレフ?
「アイツが呼んでやがったのか?!」
白角を露わにしたレーシュが?
「このアインを・・・いいや。アスタロトと知っていて呼んだのか!」
アイン?アレフではないと?
「あの角には恐るべき異能が秘められている。
俺を封じられる程の威力を持っていやがるんだからな!」
アインであった時にぶつかった。
そしてアレフにされていたのだと?
「面白い。
実に面白い奴だ・・・
ニヤリと哂うアイン。
再び身体を取り戻した悪魔王を宿した男が、最初に為すべきは?
「俺を呼んだのなら・・・決まってるだろう?」
アインが帽子を脱ぎ去って嗤った・・・
てナ具合。
・・・
・・・・なんだか。
レーシュさんも何かに憑かれている?
次回もお楽しみに!
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